無気力状態に陥ってしまう原因とは?
無気力人間という言葉が定着して
かなりの時間が経過しました。
気力が沸いてこない時
というのは誰しもあります。
この気力が沸いてこない状況が
継続している方を総称して
無気力人間と呼んでいます。
勉強をする気がしない、
仕事をする気がしない、
出掛けるのさえ億劫で
あるなどなど、
無気力が脳に条件付けされると
克服するのは簡単な事
ではありません。
無気力についての研究は
20数年前から行われてきました。
この分野を開拓したのが、
セーリックマンでした。
彼はイヌに電気ショックを
与える方法で実験を行いました。
実験の内容はまず一日目に
イヌをハンモックに縛りつけ
逃れられない状況を作り出します。
その状況下で数秒間続く
電気ショックを数十回行います。
このショックはある程度の
ショックで外的損傷を
損なわない程度のものとします。
二日目には、実験箱の中にイヌを入れて
電気ショックを与えるのですが、
与えるに先だってある種の信号が与えられ、
適切な行動をすると逃れられるようにしておきます。
この実験を150頭あまりのイヌで行った結果、
1/3が電気ショックを逃れる行動を取りました。
残りの2/3はと言いますと、ひどく無気力で
動き回ってはみせるものの、すぐに諦めて
ショックにただ耐えるだけ
という反応を示したのです。
そして、驚く事に1/3が何も
しなくなってしまったのです。
この実験の後、違った形式で或いは
ネズミやネコについても
同様の無気力感が認められました。
セーリックマンらは、回避できない
苦痛刺激に繰り返しさらされる事は、
三つのマイナスの効果を持つと説明しています。
一つ目は、環境に能動的に反応しようという
意欲が低下するという事であり、
二つ目は、学習する能力が低下する事であり、
三つ目は、情緒的に混乱する事です。
この実験では実験箱の中で様々な行動を
してみるイヌもいたようですが、
学習能力は低く、食欲の低下や血圧の
上昇する事も見出されています。
この実験を踏まえ、人間で実験を行いました。
電気ショックの代わりに騒音を与えました。
実験方法は同様な手法を用いると、
イヌの実験同様の結果が出ました。
また、現実にも騒音にさらされると
無気力感に陥り易い事が証明されています。
ロサンゼルス国際空港近くの騒音地区の
小学校と非騒音地区の小学校の3~4年生にパズルを
解く際の粘り強さを見る実験では、少し難しい問題を
与えられると騒音地区の小学生は、すぐに諦めてしまう
傾向が顕著に現れたそうです。
この実験から見て取れる事は、
避けがたい否定的な状況を一度経験すると
動物そして人間は無気力感が脳に条件付けされ、
大半が何も行動しない、その上、身体的にも
異常をきたす様になります。
こういった事は誰にでも起こり得る事ですし、
何も特別な事ではないという事です。
特に今、騒音問題は問題視されていた
時期ほど騒がれていませんが、
ロスの小学校の件を見ても明らかな様に、
騒音も脳を育んでいくのには非常に有害なものなのです。
ところがどうでしょうか?
巷に溢れる騒音は増すばかりで、
公然と子供の脳に無気力状態を
植え付けているかの様です。
また、大人の我々も騒音になれてしまった事も
あるのか騒音の中に平気で子供達を連れて
いっている様にも思われます。
また、騒音だけでなく、
日本人は苦行を与える事が
その人を強くすると思っている節があります。
その顕著な例がスポーツ選手のランニングです。
多くのスポーツ選手がランニング=苦行だと思っています。
これはランニングを子供の頃に罰で走らされるという
否定的な条件付けをされる為にランニングが嫌で
嫌でしょうがない選手になってしまっているのです。
無気力になる原因は他にも数多く挙げられますが、
まずはこの無気力の原因となる避けがたい
否定的な経験をする場面(騒音など)を
極力少なくしていく努力が望まれます。
その状況になれば、誰でも無気力になってしまうのですから、
特に子供達の為に改善していく場面は多々あります。
一つずつ力を合わせ改善していきましょう。