出会いから成功が生まれる
人間はどのくらいの人間と知り合うのでしょうか。
家族に始まり、親類、近所の方々、
学校そして勤め先などで
今まで何人くらいの方と
会っているのでしょうか。
始めて会った方と共通の知人がいたという
経験をした事がある方もいらっしゃると思います。
そんな時、「世間は狭いですね。」
という言葉を発します。
果たして本当に世間は
狭いのかをある実験結果から
みていきたいと思います。
アメリカの社会心理学者ミルグラムは、
目標人物を決め、その人物とは遠く離れた所に
住む発信人に指定し、目標人物に物が
届けられるかという実験を行いました。
この実験は①発信人の元には
一連の資料が入ったフォルダーが送り届けられ、
その中には目標人物に関する情報が含まれています。
②発信人がこの人物を直接知らない場合は
「自分の知人の中で、この人物を一番
よく知っていると思われる人」に
フォルダーを転送する様に求めます。
③発信人からフォルダーを送られた人は、
②の手続きに従って行動する様に求められ、
到着する迄実験を続けます。
④その間の情報は返信用葉書で
逐一研究者に伝えられる事になっています。
この実験はまず最初に
マサチューセッツ州に目標人物(女性)を、
そしてカンザス州に発信人で行いました。
結果は研究開始2日から3日で
1通のフォルダーが目標人物に到着したのです。
これは好結果だったのですが、
フォルダーが行方知れずになったり、
参加者の協力を得られなかったりしたケースが大半でした。
そこで2度目の実験をマサチューセッツ州に
目標人物(男性)を、ネブラスカ州に発信人を
160人にして行いました。
結果は、42通が目標人物に到着しました。
この到着に際して5.5人の仲介者が
必要であるとの結果が出ました。
この結果からフォルダーを転送する過程で
①同性から同性という性区分に基づいて
フォルダーが転送されている事、
②目標人物に最終的にフォルダーを届けた人は
Ⅰ目標人物と同じ町に住む人とⅡ目標人物と
同じ職業の人に大別される事、③最終的なフォルダーを
手渡す事になった人物は、この二つのルートの中の
特定人物(key person)であった事が明かになりました。
このミルグラムの実験を日本で三隅譲二氏と木下富雄氏が
追試研究を行っています。目標人物を大阪府下に住むX氏
(知名度の高い企業に勤務と設定:Famous条件)と
Y氏(知名度の低い企業に勤務と設定:Obscure条件)に
設定した上で(両者とも男性で40歳前後、大卒の課長で家族構成も同じ)、
発信人を福岡市西区の住民台帳から無作為に抽出した成人男性200人とし、
各100人ずつをX氏とY氏に割り当てる事にしました。
実験は依頼状、目標人物に関する情報、
謝礼品の1セットが送り届けられました。
依頼状には実験の趣旨と目標人物を直接の知人でなければ、
自分の知人の中から目標人物を最もよく知っていると
思われる人物を一人だけ研究者に紹介する事としました。
これはミルグラムの実験から、
研究者が仲介する形を取って協力を
少しでも多く得ようと変更しました。
結果は200通のうち
55通が目標人物に到達しました。
また平均ステップが7.2で、
約6.2人の仲介者を経て目標人物に到着しました。
これを条件別にみると、
X氏の場合は連鎖の完成率が29%、
平均ステップ数は5.5でした。
一方のY氏の場合は連鎖の完成率が26%、
平均ステップ数が9.2でした。(図1参照)連鎖の
完成率に差はなかったものの、連鎖の長さについては
有名企業に働くX氏の方に有利に働いたと考えられます。
ミルグラムの実験同様に、
同性のネットワークに加え、
同年齢者のネットワーク、
同職業者のネットワークによる連鎖が明かになりました。
この事から日本でも見えない絆で
わずか数ステップで誰にでも
届いてしまうという事が分かったのです。
やはり「世間は狭い」ようですから、
一期一会と言いますように、
出会いを大切にする気持ちを持って
人と接する事が必要なのではないでしょうか。